WordPressとマルウェア:脅威、影響、対策

1. はじめに

WordPressは、全世界で使用されている最も人気のあるコンテンツ管理システム(CMS)です。そのオープンソースの性質とコミュニティのサポートにより、個人ブロガーから大規模な企業サイトまで、多岐にわたるウェブサイトがこのプラットフォームで構築されています。しかしこの普及に伴い、セキュリティの脅威も増加しています。

具体的なデータ:WordPressの市場占有率: WordPressはウェブ上でのCMSのシェアの約40%以上を占めています。このような高いシェアは、攻撃者からの注目を集めやすくします。

攻撃の統計: WordfenceやSucuriなどのセキュリティ関連の会社は、WordPressサイトに対する攻撃の統計を定期的に公開しています。例えば、2021年には、毎月の平均で4億回以上の攻撃試行が報告されている。

2. WordPressの脆弱性の原因

プラグインとテーマ: WordPressの強力なエコシステムは、無数のプラグインとテーマから成り立っています。これらの多くはサードパーティによって開発されており、セキュリティのベストプラクティスが常に遵守されているわけではありません。

設定の誤り: サイトの設定ミスや未適切な権限設定が、攻撃者の入り口となることがあります。

ソフトウェアの古いバージョン: 最新のセキュリティアップデートやパッチが適用されていない場合、既知の脆弱性を攻撃されるリスクが高まります。

3.主要なマルウェアの種類とその影響

Backdoors: これにより攻撃者はサイトへの不正アクセスを持続的に維持でき、データの盗難やその他の悪意ある行為を実行することができます。

Drive-by downloads: 訪問者が感染したウェブページを訪れると、マルウェアが自動的にそのデバイスにダウンロードされる。これは、ユーザーの情報を盗むためや、そのデバイスをボットネットの一部として使用するために行われます。

SEO Spam: これはウェブサイトのランキングを操作するために使用されます。攻撃者は不正なリンクやキーワードをページに追加して、そのページのSEOを悪意ある方法で利用します。

Phishing: 偽のログインページを作成して、ユーザーから個人情報を詐取します。これは、金融情報の盗難やアカウントの乗っ取りの原因となることがあります。

実際にサイトに起きた被害事例

SoakSoakマルウェアの感染

2014年に、Revolution Sliderプラグインの脆弱性を利用して、SoakSoakマルウェアが数十万のWordPressサイトに拡散しました。感染したサイトは不正なJavaScriptコードを読み込むように変更され、その結果、訪問者のPCも感染するリスクが生まれました。

Panama Papersリーク

2016年に発生したPanama Papersリークは、法律事務所Mossack Fonsecaから数TBものデータが流出した事件です。この事務所のウェブサイトはWordPressを使用しており、古いバージョンのSlider Revolutionプラグインに脆弱性が存在していました。攻撃者はこの脆弱性を利用してサイトに侵入し、さらにメールサーバーにもアクセスを果たしたと考えられています。

Cryptocurrency Mining Malware

過去数年間で、いくつかのWordPressサイトが暗号通貨のマイニングマルウェアに感染しています。攻撃者は脆弱なプラグインやテーマを悪用してサイトにアクセスし、訪問者のCPUリソースを使用して暗号通貨をマイニングするスクリプトを埋め込みました。

WP GDPR Complianceプラグインの脆弱性

2018年、GDPRの規制に対応するための人気プラグイン「WP GDPR Compliance」に脆弱性が発見されました。この脆弱性を利用すると、攻撃者はサイトの管理者権限を取得することができました。数千のサイトがこの脆弱性により被害を受けたとされています。

4. WordPressサイトの保護策と予防

(1)常にアップデートを行う

WordPressのコア: WordPressは頻繁にセキュリティアップデートをリリースします。これらのアップデートを適用することで、新しく発見された脆弱性からサイトを保護できます。
プラグインとテーマ: 使用しているプラグインやテーマも定期的にアップデートがリリースされるため、最新バージョンを維持することが重要です。

(2)強固なパスワードを使用する

WordPressの管理者アカウントやデータベース、FTPアクセスに対して、長くて複雑なパスワードを設定することが推奨されます。

(3)ユーザーの権限を適切に管理する

必要最低限の権限だけを付与することで、悪意のあるユーザーや不正アクセスからの被害を最小限に抑えることができます。

(4)セキュリティプラグインを導入する

Wordfence, Sucuri Security, iThemes Securityなど、WordPress用のセキュリティプラグインが多数提供されており、これらを利用することで、さまざまなセキュリティリスクからサイトを保護できます。

(5)バックアップを定期的に行う

サイトの内容やデータベースを定期的にバックアップし、安全な場所に保存することで、万が一の事態にも迅速に対応できます。

(6)ディレクトリのパーミッションを適切に設定する

不要なファイルやディレクトリへのアクセス権を制限することで、不正アクセスを防ぐことができます。

(7)wp-config.php の保護

このファイルはWordPressサイトの重要な設定情報を含むため、不正アクセスから守る必要があります。

(8)XML-RPCの無効化

一部のDDoS攻撃やブルートフォース攻撃にはXML-RPCが悪用されることがあるため、必要がなければ無効化するとよいでしょう。

(9)SSL証明書を導入する

SSL(Secure Socket Layer)を使用することで、ユーザー情報やログイン情報などのデータを暗号化して、中間者攻撃から保護できます。

(10)ログイン試行回数の制限

ブルートフォース攻撃のリスクを減少させるために、ログイン試行回数を制限することが推奨されます。
これらの保護策と予防策を実施することで、WordPressサイトのセキュリティを向上させ、多くのリスクから自身のサイトを守ることができます。

5. 結論

WordPressは世界中で最も利用されるCMS (コンテンツ管理システム) の一つであり、その人気ゆえに様々なセキュリティの脅威にさらされることが多い。しかし、その脅威はWordPress自体の基本的な設計の問題というよりは、古いソフトウェアのバージョンの継続使用、セキュリティ対策の怠慢、または不適切なプラグインやテーマの使用に起因することが多い。

セキュリティは常に動的なものであり、新しい脅威や攻撃手法が日々発展している。そのため、WordPressサイトの運営者は、サイトのセキュリティを維持・向上させるためのアクションを積極的に取ることが求められる。これには、常にソフトウェアを最新の状態に保つ、強固なパスワードの使用、適切なセキュリティプラグインの導入、そしてバックアップの定期的な取得など、多岐にわたる対策が含まれる。

さらに、セキュリティの意識を持ち続け、最新のセキュリティトレンドや脅威についての情報を常に追い求めることが重要である。教育やトレーニングを通じて、自分自身や組織内のスタッフのセキュリティ意識を高めることも、セキュリティ対策の一部として非常に有効である。

最終的に、WordPressサイトのセキュリティは、単なる一度の作業ではなく、継続的な努力と対応が必要なものであると理解することが最も重要である。この認識のもと、適切な対策と予防を行うことで、WordPressを安全かつ効果的に運用していくことができる。

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